15 - 癒しの泉

私が何度も咳込むので EeePC が心配する。「おい。大丈夫か。無理するな」「うーん,疲れてるのかな…」「ふらふらじゃないか。Emacs のチュートリアルで倒れるやつなんて見たことないぞ」「えー…?それよりさぁ…,チュートリアルしてる人だって…見たことないでしょ…?」「おい,冗談言ってる暇があったら休め…」「へへ…これで気を失ったら… Emacs の伝説が…ひとつ増える…かな…」

「おい!しっかりしろ!おい!おーい!…」

私は糸の切れた人形のようにキーボードに倒れこんだ。


*自動セーブ
============

ファイルに変更を加えてまだセーブしていない場合、それらの変更は計算機が
クラッシュすると失われてしまう可能性があります。そういう事態を避けるた
め、編集中の各ファイルについて自動セーブファイルが定期的に書かれます。
自動セーブファイルは頭とお尻に # が付いています。例えば "hello.c" とい
うファイルの自動セーブファイルは "#hello.c#" です。通常の方法でファイ
ルをセーブしたときに、そういう自動セーブファイルは消されます。

計算機がクラッシュした場合、自動セーブされた編集を回復させることができ
ます。普通にファイル(編集していたもので、自動セーブファイルじゃありま
せん)を開き、それから M-x recover file <Return> とタイプするのです。確
認を求めてきますので、yes<Return> とタイプし自動セーブされたデータを回
復します。

「あれ…?」顔を上げる私。直後,頬を裂かれるような激痛がはしる。「いたっ…」

EeePC が大笑いしている。「君の顔。鏡で見てみろ。ひどいもんだ」言われるまま,モニタの横に置いたミニーマウスの鏡で顔を見る。

「うわっ」私の顔には,キーボードの跡が格子状にくっきりと残っている。「はぁ…どうしよう…」困った顔で EeePC を見る。EeePC は意地悪そうに言った。「しばらくは外に出られないだろうなぁ」「えー,困るよ…」「いいじゃないか,休む口実ができたんだしな」「そんな,休めないって」

「いや,君は休め」急に EeePC が真剣な口調になる。「君は疲れきっている。十分に体調も回復していないのに,私にはりついて無茶ばかりして」「…だって,チュートリアルが…」「チュートリアルは君のこれからの冒険を支えるものだ。そこで力つきたら,何の意味もないだろう」「それは,そうだけど…」

「無理をしてはかどるはずがないだろう?特にこれは頭を使うものなんだから」「うん…」「しっかり休んで,頭をすっきりさせてから,またやればいい。オンラインゲームと違ってサービスが終わるものでもないんだ。そうだろう?」「う…うん…」

「ほら。布団に横になって」「い,いいよ自分でやるから」「はい,ぺんぎんさん」「や,やめてよ恥ずかしいな」「音楽は要るか?」「え,ええと,じゃあ,ソフトジャズ…」「まかせろ」

私が電気を消すと,軽やかなピアノ,トランペットの柔らかい音色が私を包む。まるで夜のパブで眠くなった子供のように,私は温かい眠りの中に落ちていった。


*エコーエリア
==============

もしゆっくりとコマンドを打ったならば、画面の下のエコーエリアと呼ばれ
る場所に打ったものが表示されます。エコーエリアは画面の最下行です。


(c) 2018 jamcha (jamcha.aa@gmail.com). (c) 1985, 1996, 1998, 2001-2018 Free Software Foundation, Inc.

GPL3