04 - EeePCとEmacsとSSDと日本語と

何度目かの再起動で,EeePCが急に静かになった。

「すまん。私の空冷ファンが壊れたようだ」「いいよ。それよりシャーって音がするけど何?」

「HDDの音だ。あと,いいよってどういうことだ。ファンが壊れたんだぞ」「そんなので熱暴走するほど君は熱いキャラじゃないでしょ。君のCPUがどうなってるか見たことないの?」「ない」「私はある」「どうなっているんだ」「ガムみたいなシートでキーボード裏にはりつけてあるだけだよ」「…」

そう。EeePCのCPUにヒートシンクはついておらず,キーボードを介して放熱するようになっている。重い処理をすることがないからか,この後ファンを交換せずともCPU温度が40℃を超えることさえなかった。いや,たまに40℃を超えた。ごくたまに。ブラウザでWebページを見たときに。

「それよりさ,ファンが壊れたんなら,HDD交換しない?」「SSDにか」「そう。そうすれば無音のPCになるよ。シャー,カリカリ,って音もなくなる」「その金でタブレット買ったほうがいいと思うが」

Android端末にtermuxを入れればLinux環境が構築できる。emacsも動く。

「私は君を使いたいんだけど」「追加出費は反則じゃないのか」「うるさいのは嫌なの」「何がうるさいんだ」「HDDが」「神経質だな」「うるさいのは寝てるときだよ」「電源を切ればいいじゃないか」「それじゃワープロの速さに勝てない。だからいつでも使えるようにカーネルの更新以外で電源は落とさないしスリープも使わない」「ワープロワープロというが,emacsはエディタだろう」「私はorg-modeとyatex以外にemacsで文章書いたことがないしこれからも書かない。だからemacsはワープロ」「じゃあ普段なにでプログラムをやっているんだ?」「RStudioとかMATLABとか。ね,プログラムをやるってなんか玄人な感じしない?『ぼかあ,酒もタバコもやらないんだぁ』みたいな」「揚げ足を取るのはやめろ。それをemacsで書けばもっと便利になるんじゃないのか?」「あ,いっこemacsでプログラム書いてたの思い出した」「何だ」「SkyrimのModスクリプト」「あ,そう…」「papyrus-modeっていって」「いや,いい」

EeePCの反対を押し切って私は240GBのSSDを換装し,再びDebianのインストールと,emacsのコンパイルという修行をした。なおEeePCの無線モジュール部に取り付けられる動画再生支援用のチップがあり,それを使えばEeePCでもフルHDの動画がコマ落ちせずに見られるらしい。

そして駆動部のないEeePCが誕生した。ただ,常時emacsを起動しているだけで,電源も切らないので速度面の恩恵はそれほど感じない。

私はEeePCのサウンドデバイスをpavucontrolで切り替えると,スピーカーから音楽を流して聴いてみた。駆動部がないとこれほど快適になるなんて。いや,もともと私はEeePCのファン音をかなり不快に思っていたような。それが気になって結局新しいノートPCを買ったような。今となっては定かではないが,そんな曖昧な記憶がよみがえってきた。ただ,それをEeePCに告げればきっと機嫌を損ねるだろうから,私は心の内に留めておくことにした。



「ところで肝心の問題が済んでいないが」「なに?」「君は日本語入力をどうするつもりだ」「SKKを使うよ」

EeePCは「でたよskk…」という表情をした,ように見えた。

最初に言っとくけど、SKKの変換方法はガチで非常に独特である。 – ニコニコ大百科『SKK』

SKKはEeePCでも他のPCと変わらない速度で「私が」変換できる,現状唯一の日本語入力方式である。超多段シフトとか無理です。ごめんなさい。SKKは本体がelispで書かれているので,emacsが動くところならどこでも使える。仮に今後termuxを使うような機会があっても,やれmozcのビルドだのそういった手間がかからずに利用できるのが強みである。予測変換機能も古くから実装されていて,「にゅうりょく」といった,一つの指に負荷がかかる単語も助けてくれる。AZIKというローマ字拡張入力方式にも対応しており,私がEeePCを現役のワープロとして使えると思ったのもSKKのおかげである。ありがとうSKK開発者の皆さん。

SKKのページ (http://openlab.ring.gr.jp/skk/index-j.html)





(c) 2018 jamcha (jamcha.aa@gmail.com).

cc by-sa

results matching ""

    No results matching ""