プロローグ
「 VuePress !!」
私は ThinkPad の前で大声をあげた。
突然のことにびっくりする EeePC。満足そうな顔の私。
EeePC はこのとき,事態が想像以上に深刻だったことを初めて認識した。しまった。手遅れだったか。あわてる EeePC。かたや ThinkPad は平然としている。
「びゅ・う・ぷ・れ・す」
私は画面の文字を指差しながら読み上げている。心配そうに見つめる EeePC。こんなになるまで私を追いつめてしまった,その責任が自分にあるのではないか,と後悔している。
「 VuePress !!」
「わかった。わかったから,もう…やめてくれ…」か細い声で懇願する EeePC。「どうしてこんなことに…」
EeePC と ThinkPad は私を支えるアシスタントだ。EeePC は 『 EeePC と Emacs と○○と』 で復活して以来,貧弱なスペックを豊富な経験と頑丈さで補っている。一方の ThinkPad は『 Emacs のチュートリアルをプレイ。』で加わり,経験を圧倒するほどのスペックで私を助けている。
これまで私と二台のアシスタントは互いに衝突しながらもうまくやってきた。だが 『Spacemacs のささやき』と『Docusaurus の逆襲』で起きたトラブルをきっかけに,私は急に口をきかなくなってしまったのだ。
それでもいずれは元に戻るだろう,と EeePC は高をくくっていた。
いつものように,
「ねえ」と呼びかけてくる日が帰ってくるだろうと。
そこへ突然の奇声である。気づくべきだった。あれほどおしゃべりだった私が無口になった,それは SOS のサインだったのだと。だが覆水盆に返らず。もはや取り返しがつかないほど私の心はずたずたになってしまっていた。EeePC はそう思った。子供の心に戻ってしまった私を,これからどうやって支えていけばいいのか。EeePC は途方に暮れていた。
「私はタッチパネルに対応していません。強く押さないでください」そんな EeePC の葛藤などつゆ知らず,ThinkPad は画面を押す私に警告を発していた。
抱き枕を両手で抱え,すやすやと眠る私。暗転したディスプレイで考えこむ EeePC。同じく消灯した ThinkPad のブラウザには,URL に localhost:8080
と表示されていた。
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