07 - sidebars.json
EeePC は私の腕にテープが貼られていることに気づいた。「君,その手」
「なに?」「テーピングか?」「違うよ。ストリートファイトで拳を痛めないように」
「冗談はよせ。腱鞘炎だろう?」「そんなんじゃないって」
「昨日は腱鞘炎について検索記録が 24 件残っていますが」ThinkPad が正直に言い,私はむっとする。
「病院には行ったのか?」「明日行く。あと少しで終わるし」「おい,悪化するぞ」「骨は折って強くする」「あのなあ,そういう根性論がよくないってずっと言ってるだろう」
なおも続行しようとする私と EeePC のあいだで激しい応酬があり,私がやめるまで妨害を続けるという EeePC の脅迫に,とうとう私は屈した。
片手が使えなくなった私,EeePC,ThinkPad が三角形を描くように佇んでいる。
「原因はキーボードだな?」「違う。私の手が軟弱だから」「おい,そうやっていつも君は…。はぁ。もっと早くキーボードを外付けにするよう言っておくべきだった」「ThinkPad は悪くない」「ああ。誰も悪くない。でも君は腱鞘炎になりやすい。だから普段から気をつけなきゃいけない」「せっかくいいキーボードがついてるのに,外付けなんて,かっこわるいよ」「使いすぎなければな」
それからは私は,EeePC の監視のもと,音声認識を利用して文章を作成することにした。修正が必要な部分は慣れない片手で行う。
「便利だねえ」「音声認識か?」「うん」「じゃあこれから使っていけばいい」「小説のセリフ読むのは恥ずかしいけど」「まぁ…そうかもな」
sidebars.json
「 sidebars.json
は目次のページ。GitBook とかだと SUMMARY.md
が担当してる」
https://github.com/facebook/Docusaurus/blob/master/examples/basics/sidebars.json
{
"docs": {
"Docusaurus": ["doc1"],
"First Category": ["doc2"],
"Second Category": ["doc3"]
},
"docs-other": {
"First Category": ["doc4", "doc5"]
}
}
「 "First Category"
とか書いてあるのが目次の小見出しで, doc1
とかが個々のファイル id。 前にも説明した けど,Docusaurus は文書ごとに id を振らなきゃいけない。その値をもとにして,ここで並べるわけ。 [ ]
の中には複数のファイルを書けるよ。たとえば私の場合はこんな感じ」
{
"docs": {
" ": ["01", "02", "03", "04", "05", "06", "07"]
}
}
EeePC から質問がこないので,私が話す。「このファイル,拡張子が json なんだけど」「ああ」「.js との違いってわかる?」
「json is an open-standard ...」ThinkPad が wikipedia を読み上げはじめる。「あ,待って。私が説明するから。聞かれたときのために準備しておいたんだ」
「すまん。もっと私が気を利かせればよかった」そう謝る EeePC に,私は気にしないように言う。もともと自分でも知りたかったからだ。
「json てプログラムじゃなくて設定ファイルみたいなものなんだ。 .ini
みたいな。共通した書式だから,Javascript 以外でも使えるようになってるんだって」「ほう」「これだけだと『ふーん』て感じなんだけど,面白いのが,json て 2001 年に 発見 されたんだって」
「発見?」EeePC も興味をひかれる。「そう。作られた,じゃなくて発見」
「この話初めて知ったとき,Javascript の仕様を使って新しいプログラム言語を作ったんじゃないか,って思った」「新しい言語?たとえば何だ」「うーん,そうだな。漢字から万葉仮名作るとか。この場合は表意文字を使って表音文字が作られてるから,漢字の仕様のなかでカナの文字表現ができる。アルファベットからローマ字もそうだよね。海外ゲームのチャットでローマ字会話とかさ」「ほう…」
「そしたらね,全然違ってた。Crockford さん本人が 講演 で説明してたんだけど」「ふむ」「json みたいなデータ構造?のアイデアは昔からあって,自分はそれを発見したんだ,って言ってる」「なるほどな。それなら発見か」
「うん。『こんな便利なものがあったんだ!』って感じだから発明じゃなくて発見」