016 local branch
『それじゃあ行くか』「うん」
クロメに促され,バツが剣を構える。
『 C-x g b c ⏎
だ』
「あ,あれ?何か前に言ったのと違うんじゃない?」『これでいい。やってみろ』「う…うん」
そうして指を剣にのせたまま,時間だけが過ぎる。
『おい,早くしろ』「こわいんだから少しだまっててよ ! 」
バツは一度大きく深呼吸する。
「…」そして指をなぞった。
ぷつっ。
C-x g b c ⏎
Name for the branch:
『 poena ⏎
! 』
poena ⏎
Head: poena
突風が吹いた。これで昔の霊山に…
「あ…あれ?」
あたりを見回すバツ。黒い空。枯れはてたイバラの森。「も,もしかして私失敗しちゃった?」
『これでいい。誰にも邪魔されない,君だけの世界だ』
満足な様子のクロメ。バツは納得できずに聞く。
「さっき世界を複製したんじゃないの?」
『そうだ。だが,あの master
という世界では失敗は許されない。これまで君が生きてきたようにな。その点,いま君が master
から複製した,この poena
という世界では,君が死なないかぎりたいていの失敗はやり直せる。遊び場のようなものだ』
「ちょっと,遊び場って気軽に言うけどさ,なに?私,死んじゃうかもしれないの?」
『当たり前だろう。まさか過去を変える力があるからって,不死だとでも思ったか?』
バツの顔が青ざめる。これまで身体を傷つけてこれたのも,いざとなればよみがえれる,そんな気持ちがあったからだ。
「なんか,急に怖くなってきた…」
『安心しろ。保険はいくつかある。即死するような事態ではどうしようもないがな。はっはっは』
「はっはっはって,もう…」
『本来の世界に戻すんだろう?』
「え」
ふいにクロメが優しく話しかけてきた,そんな気がした。バツはその言葉に勇気づけられる。
「うん。だって,そのために私魔族になったんだから」
poena
というバツの世界で,過去に戻る。そこで失敗を繰り返しながら歴史を変え,うまくいったものを master
に取り込んでゆく。そうして完成した master
を,元の世界と融合させる。これがクロメが提案した計画だった。
あまりの壮大さにバツが圧倒される。「うまくいくかな…」
『やめるのか?』
「やめるわけないじゃん ! ほら,さっさと昔に戻るよ ! 早く案内して ! 」
調子のいいやつだ。そう言いながらも,クロメは自分の力が発揮できる機会を楽しんでいた。
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