017
l b
バツの呪文で magit-log
が開かれる。クロメの指示で,以前やったように歴史をたどってゆくと,一番下に行き着いた。
0bfd8ed * In the beginning there was darkness
『一気にいくぞ。 b c ⏎ primus ⏎
!』
b c ⏎ primus ⏎
Head: primus
突風が吹く。光のまぶしさに目がくらんだ。
明るい空。緑の樹々。生命の息吹。
魔族の力はまだここまでは及んでいない。
「空気がおいしい ! 」
全身で空気を吸い込むように,何度もバツは深呼吸をする。
「げほっげほっ」むせるバツ。それをからかうクロメ。まるで魔族の脅威などないかのような平和な時間だった。
だが新鮮な空気で頭がさえると,バツの目が真剣になった。
「早くみんなを助けに行かないと」
『どこに行くんだ?』
「霊山は七つの寺院で守られてるの。今,魔族の襲撃を受けてるはず。ひとつひとつ追い払おう」
『間に合うのか?』「ひとつ守ったらまたこの瞬間に戻ってきて,別のところに行けばいい。でしょ?」
名案でしょ,と言わんばかりに明るい顔を見せるバツ。
『なるほど。ひとつの寺院を守るごとに poena
に変更点を取り込んでいくわけか。君にしてはいい考えだな』
「でしょ ? じゃあ早速,小七院 (しょうしちいん) につれてって ! 」
静寂が支配する。
「どうしたの?」『いや,そのなんとかいう寺院に行くんだろう?』「小七院だよ。ほら早く」『君が場所を知ってるんじゃないのか?』「そうだよ。だから早く」『それなら早く出発したほうがいいんじゃないのか?』「だからそう言ってるじゃん ! 」『何を怒ってるんだ君は』
「だーかーらー,早く私を小七院につれてってって言ってるの !」
『どうやって』
「…へ?」
『ん?』
「私たち,一瞬で過去に戻ってきたよね?」『ああ』「同じように,一瞬で場所を移動するとか…」『そんなことできるわけないだろう』
「…」
バツの身体が地面にくずれおちる。「それじゃあ,何の意味もないよ…」『 Git は記録して追跡するだけだ。それに地獄で Git を使えるほどの魔族なら移動という概念すらないだろう』
「じゃあどうして君は Git を使えるのにそれができないんだよ ! 」『俺は Git を使えないからお前にとりついたんだ ! 』「お,お前ってなんだよ ! 」
「魔族がいるぞ ! 」
大きな声がした。ふりむくと,数人が武器を構えてこちらをにらんでいる。
「ま,魔族って…」
『俺たち以外ないだろう。逃げるぞ』
クロメの合図でバツはあわてて駆け出した。
「ま,待てっ ! 」
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