011: create branch

…よし,たぶん,大丈夫」『準備ができたなら前を見ろ』

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e869d21 | | *  DID dtower

...

顔を上げたバツ。そこには先に呼び出した文字や記号が並んでいる。

『お前には読めないだろうが,これは Git の記録を並べたものだ。歴史のようなものだな』「歴史…」

『これは上に行くほど新しい。つまり地獄の門が開いた瞬間まで戻るには,一番下まで遡 (さかのぼ) る必要がある』

「どうするの?」『お前が切った指でなぞっていけばいい。順に辿 (たど) れるはずだ』「わかった」


言われた通りに過去をたどっていくバツ。指を下から上に動かすごとに,文字が次々に入れ代わる。するとあるところで反応がなくなってしまった。

Type + to show more history

『そうだ。そこでさっきの呪文を使え』すかさずクロメが指示を出す。

バツが唱えると,まるで折りたたまれた手紙が開かれるように,さらなる文字が現れる。らせんの渦を下っていくようにバツは記録を追い,やがて底へと到着した。

0bfd8ed * In the beginning there was darkness

『よし,最後の仕上げだ。剣を構えろ』

言われるまま,かちゃり,という音をたて,バツが剣を握る。だが詠唱には必ず痛みが伴うため,その顔は険しい。

「ね,ねえ,あと何回切ればいい?」

『詠唱がうまくいけば,1 回で済むだろう』

「やった ! 」ぱっと明るい顔になり,剣を構える。『いいか。呪文は b c だ。だが,詠唱が成功しても指を離すなよ』「わかった」

正面を向き,わずかに指に力を入れるバツ。

b c

バツが呪文を唱えると,見覚えがあるような文字の群れがせりあがってくる。

Create and checkout branch starting at: |
-----------------------------------------
magit-branch-and-checkout
-----------------------------------------
0bfd8ed
master
HEAD
origin/master

...

「俺が『いい』というまで指を離すなよ」「うん」『まず

すると文字の群れは消え,こんどは地面に新たな文字が現れた。

Name for the branch: 

クロメが何かをぶつぶつとつぶやく。それは呪文となってバツの頭のなかでビリビリと反響する。バツは言いつけを守り,身体をこわばらせながらもなんとか耐える。

scelus ⏎ ! 』

クロメが叫び,バツが応じた。

scelus ⏎


そのとき突風が吹いた。あまりの強さにバツは腕で身体を守ってしまう。

Head:     scelus

「 ! ! 」

しまった。切れた指と剣に目をやる。後悔しても遅い。詠唱は…


『うまくいったぞ。周りを見てみろ』

クロメが満足そうに言う。


「え?」言われるままに周囲を見回すバツ。

「あ…」その光景が意味するものを理解した瞬間,うれしさで鼻の奥がじんわりと痛んだ。

緑の樹々。青い空。そして暖かな日射し。

帰ってきたのだ。あの頃に。魔族に穢 (けが) される前の世界に。



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