# 021

某県の警察が心霊探偵と名乗る人物を雇って以来、殺人事件の犯人がたてつづけに逮捕されるようになった。心霊探偵は捜査のコツについて、現場で被害者の後ろ姿を探すことだと言った。人間は自分の背後が見えない。なのになぜ後ろ姿が思念として残るのか。それは誰の見た景色なのだろうか。

# 022

ドゴン族の神話には、翻訳されていないものがいくつかある。そのなかに『神々は火の素がなくなると、地上の生物を根絶やしにし、新たな素と為す』というものがあり、これは石油など化石燃料の成り立ちや、過去の大量絶滅を示唆するものといわれる。現在、人類はすさまじい速度で火の素を消費している。

# 023

アメリカのある慈善家が餓死するという事件が起きた。飢え死にするほど私財を寄付するとは考えにくく、死の原因について多くの謎が残された。数年後、彼の日記が発見された。これはその最後の一文である。「スターウォーズを初めて見る子どもたちに、どの順番で勧めればいいのかわからない」

# 024

シアトルでは現在でも馬車が利用されている。これは観光名物にもなっているが、実は隠れた理由があるとされる。馬の足音は石畳で特異な反響を生み、地下に穴があいていれば即座にわかる。海に面した情報集積地であるシアトルでは、文字通り地下の工作活動が絶えず、馬車がそれを防いでいるのだそうだ。

# 025

ある男が砂漠をドライブ中にエンジントラブルにあった。衛星携帯からの写真によると、幸い近くにオアシスがあるとわかった。命の水だ。そこで救助を待とうと歩いたところ、やがて金網にぶつかり、先に進めなかったそうだ。そこには工場らしき建物が並び、とある飲料水メーカーのロゴがあったという。



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