# 091

S県の病院に入院していた老女が、過去に起きた臨死体験について語った。夜中、突然の発作で意識を失い、気づくと川辺に立っていたそうだ。そこでは大勢の老人が腰をおろし、うつろな目で何かを作っている。「ここはどこですか?」と一人の老人にたずねると、彼は「賽の河原」とつぶやいたという。

# 092

レンヌ地方の神父デキュー氏は幼い頃から幻聴に悩まされていたが、本人はそれを神のみことばとして否定し続けていた。昼夜を問わずささやく声に耐え続けた彼の生涯は74年で幕を閉じたが、死の間際、彼は声の内容を告げた。昔、神に世界平和の方法をたずね、その膨大な手順をずっと聞いてきたのだと。

# 093

高校生霊能者のTは、能力に目覚めたきっかけを語った。真夜中、珍しくテレビで心霊特集をやっており、映っていた長髪の男性が手をかざすと何かが伝わってきたのだという。するとその話に昔からのオカルトファンが違和感を抱いた。Tのいう男性は20年前に死んでいるからだ。何を観たのだろう。

# 094

三宝村は逸話の宝庫として知られる。まず江戸時代に毎年無理心中が起きると書かれたが嘘だった。次に明治時代に毎年熊に襲われて死者が出ると書かれたが嘘だった。大正時代に毎年雹が降るというのも嘘で、昭和時代に運良く赤紙が来なかったのも嘘だ。なお平成の大合併で三宝村が消えたのは本当だ。

# 095

T市に暮らす一人の男が、背中の痛みに悩まされていた。病院を訪ね歩いてもいっこうに原因がわからない。するとある医師が、背中のタトゥーがラテン語の文になっていることに気づいた。男が言うにはかつて一緒に住んでいた女が入れたものだという。その後、男は殺人の罪で逮捕されたそうだ。



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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