# 056

N 市は過疎による予算減少の影響を受け、使用されていない信号機を撤去することになった。その調査の過程で、山奥のとある信号機だけは、付近に誰も住んでいないにも関わらず頻繁に使用されていることがわかった。そのボタンは鋭い爪で削られたように見えるほど酷使され、市は交換も検討している。

# 057

かつて存在したとあるウェブ掲示板には奇妙な噂があった。日付が変わって 100 人目の投稿者は、それから 100 日以内に必ず死亡するというのだ。運営会社は噂を払拭するため、100 人目の投稿者がコンピュータによる自動投稿になるよう改良したところ、100 日後に社長が自殺したという。

# 058

わずかな音声から発声者の本心を補ってくれるメッセージアプリ「スポークス」。普段は言いにくい本音も代わりにしゃべってくれるということで話題となったが、深刻な不具合が原因ですぐに配信停止になってしまった。一部の利用者が「何を言っても『死にたい』としか表示されない」と報告したからだ。

# 059

先日、あるプログラム言語のバグが 20 年の歳月を経て修正された。それは些細なもので影響も少なく、また時間をかければ解決できるということで放置されていたという。その修正に関わった開発者は、「誰でもできるといいながら今まで誰もやらなかった。600 時間かかったからね」と言ったそうだ。

# 060

ノルウェーのベンチャー企業が『暗号通信を解読するシステム』の開発に成功したという。そのシステムは機械学習を通して、暗号が短時間で解ける数学的な法則を見つけたらしい。それは同時に数学における大きな謎が解明されたことも意味していたが、悲しいかな、機械はその法則を語るすべを持たない。



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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