# 061
三河に伝わる話。日照りに苦しむ村に、銀色の箱を持つ占い師がやってきて「七日後の正午に雨が降る」と告げて去った。果たして雨が降ると、村人は奇跡を称えてその場所を「正午」と呼んだ。当時『時間』の概念は曖昧で、人々が時刻を場所の名前と勘違いしたのだ。占い師とは何者だったのだろう。
# 062
今は少なくなった電話ボックス。そのなかに、地獄と通話できるものがあるという。先日、その場所をつきとめた男がいたそうだ。彼が受話器を取り、10 円玉を入れて耳をすませると、確かにどこかへつながった。そこで彼が「もしもし」と言うと、まったく同じ声で『もしもし』と返ってきたという。
# 063
海沿いの墓地が洪水に見舞われた際、多くの骨にまざって、いびつな形のマネキンが何体も発見された。それらは不法投棄されたものとして処分されるところだったが、ある家族が「父の腕ではないか」とうったえてきたという。その地域は魚介類へのマイクロプラスチック汚染が激しいことで知られる。
# 064
ニジェールに住むブラハ族は、近代化の波が押し寄せた1970年代まで原始的な暮らしを行っていた。彼らの話すエピソードには様々なものがあるが、なかでも辛かったのは毎日川まで水汲みに行くことだったという。村から川まで往復40km以上あり、それを2時間で済ませなければならなかったからだ。
# 065
手製の履物『草鞋』。不思議なことに、ある漁村にはその文化が伝わらなかったそうだ。なんでも、昔、海に入れば丈夫な履物がいくらでも採れたからだという。戦争の影響で現存するものはないのだが、史料の挿絵によると、それは数億年前に絶滅した三葉虫に酷似している。何を履いていたのだろう。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
(c) 2019 jamcha (jamcha.aa@gmail.com).