# 106
女優のカミラ・シェリダンが二十歳という若さで亡くなったとき、悲しみにくれる遺族は、生前の美しさを保つよう防腐処理を施させてから埋葬した。その後、戸籍に記された彼女の年齢と容姿が一致しないことがわかり、捜査のため遺体が掘り出されたのだが、その顔は老婆のようにシワだらけだったという。
# 107
北欧のある地域では、舗装もされていない山道に雑貨屋が建っていることがある。一年の大半が雪で閉ざされ、訪れる客もいない店をどうして開いているのか。店主によれば魔除けだという。氷の女神には妹がおり、しょっちゅう迷子になるので、街に行ってしまわないようここで道案内をするのだそうだ。
# 108
多くの人は1分間息を止めるだけでも苦しい。そんななか15分もの間息を止め、当時の無呼吸世界記録を樹立したのは意外なことに服役中の囚人だった。彼は禁断症状を紛らわせるために無呼吸を行っていたそうだが、出所後一年も経たず薬物所持で逮捕されたという。薬の誘惑は忍耐で抗えないのだろうか。
# 109
産業革命の頃、目覚まし代わりに窓を叩いて中の住民を起こす仕事があった。アパートの窓を叩くゴツゴツの手が印象的だったと、当時の思い出を語る者も多かったという。ただ、証言には奇妙な点もある。三階や四階に住んでいた人もその手の話をしていたからだ。誰だったのだろう。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
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