天馬

明階・政 (せい),汝西に在り。仁維の末年,子衡,狼令にて立つ。民,これに従いて宮城を攻む。その焔,残紅の地を染めるが如し。政,天馬に乗りて逃ぐ。駆けること三昼夜,終に茜消ゆ。銀杏の庵に旧友在り。政,馬を降りて,共に逃ぐることを勧む。友曰く,「別れて幾星霜,足朽ち,立つこともあたわず。ゆえに留まりて,政の無事を想 (ねが) う」と。政,涙を垂れ,跪きて曰く,「我が足を汝に捧ぐ」と。友を負いて発つ。天馬,並びて従う。銀杏散りて,道を黄金に染む。その実,二人の頬にも成りぬ。



– 了 –


この物語はフィクションであり,実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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