賢者の石

妖気をまとった「それ」が現れたとき,俺たちは狂ったように「それ」と戦った。

「それ」との戦いは頭がおかしくなるほど難しかった。まずこっちの装備はク○だった。それにどのスキルが有効かそうじゃないのかを,ひとつずつ確かめていかなきゃならなかった。大抵のスキルが Nerf (弱体化) されていたからな。おまけに向こうの攻撃力は狂っていて,2 発でこっちをオダブツにする。だから防御に多くの資源を費さなきゃならなかった。それでも場所が悪ければやられるから,戦う場所まで考える必要があった。

まともに戦える場所を探して,まともな装備を揃えて戦う。刺激的だったね。

本部には多くの苦情が入った。それは当然だろう。「それ」はこっちを倒すために,いくつかのルールまで破っていたからだ。けれども,まあ少なくとも俺たちは,それを楽しんでいた。全てが挑戦的だったからな。

だから本部が『賢者の石』を配る,って言ったとき,「ああ,これで退屈になるな」と思ったよ。現実は果たしてその通りになった。賢者の石は「それ」を一時的に弱らせる。あとは「それ」が力を取り戻す前に袋だたきにすればいい。スキルも戦術も頭もいらない。

難しさが「それ」との戦いの全てだった。賢者の石を使って楽しんでいる人がいるなら,まあいいんじゃない。



– 了 –


この物語はフィクションであり,実在の人物・団体とは一切関係ありません。

"8 Months of D3" inspired me to write this, but please keep in mind that this novel does not mention about D3 at all.

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